「新型コロナワクチンを打った方がいい人、打たない方がいい人」 (池田清彦のやせ我慢日記 第195回)」

*本記事は「池田清彦のやせ我慢日記 第195回(202179日)」を池田清彦氏の許可を得て、特設ページとして公開させていただいたものです。ご家族やご友人に紹介したい方、引用したいという方、必ずこのサイトのURLを引用した上で出典を明記してご紹介いただければと思います。

 

 

 先ごろ、「国内の医師ら450人がワクチン中止を求めて、厚労省に請願書を提出した」というニュースがあった。請願書に同意したのは国内の医師390人と地方議員60人で、発起人の高橋徳・ウィスコンシン州医科大学名誉教授は「死亡率が非常に低く、感染者の80%が軽症にもかかわらず、安全性もまだ分かっていない遺伝子ワクチンを国民全員に接種させる必要があるのか疑問だ」と説明したという。他の医師からも「少なくとも356人が亡くなっている」「治験が済んでいない」といった発言が相次いだという。

 

 確かに、6月18日の時点で接種後356人が死亡しており(現在は550人以上)、そのうちのかなりの人はワクチン接種の副作用(副反応)死であることは間違いないので(厚労省は認めていないが)mRNAワクチンが完璧に安全でないことは確かである。しかし、どんなことにもリスクゼロはあり得ないので、この理屈が通れば、絶対安全な自動車はないので、自動車を全廃しようという話も通ることになる。

 

 356人が亡くなっている時点で、1回でも接種した人は約2338万人である。356人がすべて副作用死だとすると、接種による死亡率は約0.0015%となる(7月3日時点の1回接種者は3118万人)

 

 一方、COVID-19による国内の死者は7月3日時点で14788人。日本の総人口が約1億2623万人なので、死亡率は約0.012%である。接種による死亡率より10倍ほど高い。2回接種しても感染(突破感染)する確率もゼロではなく、不幸にも死亡することもあるが、死亡例は日本ではまだ聞かない。

 

 ワクチンを1回以上接種した人の数が1億8000万人を超えたアメリカでは、接種後COVID-19に罹って亡くなった人が少なくとも数百人に上るが、500人としても死亡率は0.0003%くらいである。アメリカの人口は約3億2820万人、COVID-19による死者は約60.5万人なので、死亡率は0.18%である。ワクチンを打った場合の600倍で、ワクチンを打つメリットは大きい。

 

 国民へのワクチン接種を中止せよという要請は、ワクチンを打つことによって助かる人を犠牲にしてもいいという事なので、とても許容できる話ではない。それに、そもそも打ちたくない人の自由は担保されているわけで、自分たちが打ちたくなければ、打たなければいいわけで、自分たちと同じことしろと強制するのは正義の皮をかぶった独裁志向である。

 

 自分たちの行動様式だけが正義だとの考えは、他者の選択の自由を奪うことに繋がるわけで、他者の行動により、誰かが直接的な不利益を被らなければ、他者の行動を制限するのは、基本的にお門違いなのである。話は少しずれるが、夫婦別姓を認めない人もワクチンを禁止しろと請願する人と、頭の構造が同じである。夫婦別姓にしたい人は別姓にすればよく、ワクチンを打ちたい人は打てばいいわけで、いずれにせよ、個人の自由を認めない社会は暮らし難い。

 

 同じように、すべての人に基本的にワクチンの接種を義務付けるのも、もちろん問題である。仄聞するところによると、ワクチンを打たない人に、職場で嫌がらせをしたりすることもあるようで、右でも左でも、どうしてそう極端になってしまうのかしらね。科学に絶対はないわけで、未来のことは確率論的にしか分からない。ワクチンを打たずに、3密の所に毎日出入りしていても感染しない人もいるし、ワクチン打って数日後にくも膜下出血で死亡する人もいる。しかし、そういう事例を取り上げて、3密は別に危険じゃないとか、ワクチンを打つのは自殺行為だとかいう言説は間違っている。

 

 しかし、一部の人の頭は、確率論的な話よりも決定論的な話の方が好きなようで、「絶対だ」と確信を込めて断言する人の方を信用するみたいだ。陰謀論が流行るのも無理はない。新型コロナワクチンに関しても、世界人口削減のための生物兵器で打つと5年以内に死ぬとか、マイクロチップが埋め込まれているとか、人のDNAを改変するとかいったデマが流れていて、知り合いにも半信半疑の人がいてびっくりする。

 

免疫学や分子生物学の基礎知識がない人に、いきなり、mRNAワクチンの機作を理解してもらうのは無理でも、専門家の話を丁寧に聞けば、高等数学などに比べれば、理解するのは遥かに容易なのだけれども、陰謀論を信じる人は、論理の糸を辿って考えることを拒否し、自分が信じたい結論を補強する言説だけを選択的に受け入れるので、それに反することを言っても聞く耳を持たないのだ。

時に、私に「ワクチンは打たない方がいい」と言ってもらいたくてかかってくる電話もある。いくら説明しても、「ワクチンは絶対安全だと責任をもって言えるのか」と問い詰めてくる。「絶対安全とは言っていない、ワクチンを打って死ぬ人も稀にいる」と答えると、「俺は、ワクチンは絶対危険という人の方を信じるよ」と返ってくる。聞いてきたから説明しただけで、縁なき衆生は度し難い、とつくづく思う。

 

科学的に最も合理的な答えは「ワクチンを絶対打つべきだ」と「ワクチンは絶対打つべきではない」との間にあるわけで、状況によって打った方がいい場合と、打たない方がいい場合がある。以下、その辺りのことを説明する。先に説明したように、社会全体のCOVID-19の死亡確率を下げるという点からは、ワクチンを打った方がいいことは間違いない。ただ、年齢によってCOVID-19で亡くなる確率は全く違うわけで、すべての人に打った方がいいとは言えないのである。

 

ワクチンを打つ理由は2つあって、一つは自分の死ぬ確率を下げるため、もう一つは、社会全体に集団免疫を付けて、新型コロナウイルスの終息を早めるためだ。日本では現在12歳以上のワクチン接種は容認されているので、12歳以上のすべての人に可及的速やかにワクチンを接種すれば、COVID-19の流行は暫くすれば治まるだろう。

 

感染者が少なくなれば、変異株の出現確率も小さくなる。例えばある単位時間内に10万個のウイルスのうち1つが突然変異を起こすとして、ウイルスが10億個あれば、1万個が突然変異を起こすことになる。突然変異は方向性がなく、ある突然変異は感染力が弱くなることもあるし、ある突然変異は感染力が強くなることもある。突然変異したウイルスの数が増えれば、後者のタイプのウイルスも現れやすくなる。

 

感染力が強いウイルスは感染力が弱いウイルスを駆逐して急激に集団中に拡がっていく。感染者の数が減らないと、次々に強力な変異ウイルスが現れることになる。但しウイルスにとっては人を殺す確率が高い変異はマイナスなので、悪性度が高くなることは通常はないと考えてよいと思う。

 

ワクチンを打つ人が多くなれば、集団中のウイルスの数も減るので、変異株の出現頻度も低くなり、パンデミックは収まっていくだろう。新型コロナウイルスに感染しても滅多に重症化したり死んだりしない若者が、ワクチンを打つとしたら、それは自分のためというよりも、社会のための利他的な行動という事になる。国家が若い人にも接種を勧めるのは、社会のために、自身の体に起こる多少の不利益には目を瞑れ、という事に他ならない。

 

それでは、純粋に自分だけのことを考えて、打たない方が死亡リスクが少ない人はどんな人なのだろうか。30歳未満の健康な人は、コロナに罹って死ぬリスクはほぼゼロである。6月9日現在、約1200万人いる20代のうちCOVID-19で亡くなった人は3人である(そのうち2人は肥満症)。接種を受けた約50万人の20代のうち、接種後なくなっている人も3人である。厚労省は接種後の死亡とワクチン接種の因果関係を認めていないが、26歳の女性看護師さんは、接種4日後に「出血性脳卒中(くも膜下出血と脳出血)」で亡くなっており、恐らくこれはワクチン接種が原因であろうと思われる。

 

「はちのへ99クリニック」のホームページに「接種しなかった場合のリスクと接種した場合のリスクの比較」というコラムが載っていて、データを基に丁寧な計算をしている。それによると、ワクチン接種後、「肺塞栓症」で亡くなるリスクは通常の場合より約19倍、「出血性脳卒中」で死亡するリスクは約6倍高いという。

 

近藤誠は最新刊の『新型コロナワクチン 副作用が出る人、出ない人』(小学館)の中で、4月の初めに開かれた新型コロナワクチン関連の審議会で報告された、接種後死亡6人のうち4人が「出血性脳卒中」であったと述べている。この時点では死亡例が少なく、原因を断定することはできないが、「はちのへ99クリニック」の報告では、5月30日現在、接種後3週間以内に死亡した人139人のうち41人が「出血性脳卒中」で、5人が「肺塞栓症」であったと書かれている。「肺塞栓症」は例数が少ないので、何とも言えないが、「出血性脳卒中」の相当数はワクチン接種の副作用死であると思われる。今のところ、日本では公的には接種していないが、アストラゼネカのワクチンでは、血栓症と血小板減少症の副作用が出ることが知られている。

 

副作用死は若い人でもまれに起こると考えられるので、今のところCOVID-19の死者がゼロの10代にワクチンを接種するのは大いに問題である。自分の命が一番大事という人には、接種をしないことをお勧めする。私は73歳で、個人的には接種のメリットの方が大きいので、既に2回接種を済ませた。70代、80代の人でまあまあ健康な人は、打った方がよさそうだ。30歳未満の人は、接種をしない方が死亡確率は低い。超高齢者や重い基礎疾患のある人で、他者とあまり接触しない人もワクチンを打つデメリットの方が高そうだ。

 

問題は、30代後半から60代前半までの人で、この人たちは、自分の健康状態と活動状況を勘案して、打つかどうか自分で決めるよりない。6月9日現在の接種後死亡人数は、30代2人(男2、女0)、40代7人(男1、女6)、50代6人(男3、女3)、60代16人(男8、女8)、70代33人(男25、女8)、80代68人(男37、女31)、90代55人(男13、女42)である。一方COVID-19による死者数は、6月28日現在、30代15人(男15、女0)、40代72人(男57、女15)、50代280人(男232、女48)、60代849人(男669、女180)、70代2747人(男1900、女847)、80代4856人(男2708、女2148)、90代以上2484人(男909、女1575)である{厚労省発表のグラフを基に読み取ったので多少の誤差はある}。40代、50代、60代は接種後死亡した人の数より、COVID-19で死亡した人の数の方が圧倒的に多いので、社会的活動が活発で、他人と接触する機会の多い人は、接種をした方がいいと私は思う。 

 

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